業務内容
病理組織診断
受付件数は下記表のとおり、約5,500件(検体数:約8,200件、組織標本枚数:約53,000枚)で、病院の性格上、生検診断に対して手術材料診断件数の割合が高く、重篤度の高いものや、合併症などで複雑な病態を呈するものも多く、早急な結果を求められることも常です。また稀少症例なども多く、これらの解析における病理部門への要求度も高くなっていますが、すべての診断において2名の病理専門医によるダブルチェックを行い、診断精度向上に努めており、「病理診断管理加算2」の算定条件以上のチェック体制で診断クオリティを高めています。
基本的には組織標本が作製された当日(受付の翌日)には報告するようにしています。特殊染色や免疫組織化学染色を要する症例はその結果を後日、追加報告という形で電子カルテに公開するようにしています。免疫組織化学染色においては、現代医療
に対応できるように各種抗体を整備し、診断や病態の理解及び治療に反映できるようにしています。また、他施設で行われた病理診断に対する再評価依頼も多く、他施設と連携を取りながら、地域全体でのレベルアップも念頭において業務遂行しており、難解例では九州管内のみならず、全国のスペシャリストへ個人的または日本病理学会を介してコンサルトすることで対応しています。さらに各学会に症例や研究内容を提示する事で病理診断における精度管理を行っています。
近年、癌治療においては癌遺伝子変異検索が必須となってきています。その検体のほとんどは病理組織診断・細胞診断の検体を用いて行われており、病理診断科には診断のみならず、量的・質的に遺伝子検索可能な検体の提供が求められてきています。
2025年からは土曜日にも切出しを行い、過固定を防止しています。結果として金曜日や連休前には抑制していた癌症例の手術や内視鏡等での検体採取も通常通り行えることとなり、手術数等の増加に対応しています。また、ガラス標本上の腫瘍含有量から
提出すべき検体量を算定する等、高額な遺伝子検査が失敗なきように努力しています。
術中迅速診断
迅速組織診断は年間400件強行っており、1検体20分程度で診断報告を行っています。すべての症例において細胞診断(擦過scratch・捺印ほか)も併せて行い(保険診療上には算定されないため、下記の迅速細胞診数には含まれていない)精度向上に利用しています。特に、消化管や肺部分切除など機械自動吻合においては、実際の切除断端を最も正確に反映させることができるステープル断端面の擦過・捺印細胞診を併せて行っています。
細胞診断
年間約6,700検体前後で、現在、日本臨床細胞学会認定の細胞検査士6名が在籍、常時3名が細胞診断を担当し、約20%の疑陽性・陽性症例及びリンパ節、乳腺や甲状腺の穿刺吸引材料や迅速細胞診は病理専門医と細胞検査士が協議し、スクリーニング陰性例は技師2名による確認後最終報告しています。2018年度からは病理医・細胞診担当技師全員の参加のもと最終診断会を行い、診断基準・報告様式・診断レベルの均てん化、症例の共有を図り、細胞検査士資格取得前のトレーニングにもなっています。
標本作製のほとんどはLiquid-basedcytology(LBC、BD社)法を導入し、免疫細胞化学へも応用しています。また、呼吸器・肝胆膵系の内視鏡検査やCTガイド下生検等ではRapidOn-SitecytologicalEvaluation:ROSEを行っており、患者負担軽減を図るとともに、近年増加している遺伝子検索の検体採取の際にも癌細胞の有無・量的判定において重要な役割を担っています。
病理解剖(剖検)
「白い巨塔」大河内病理学教授の言を借りるならば、『病理解剖というのは一言でいえば、不幸にも死の転帰をとった患者の最終的な全身検査とでもいうべきもので、疾病の原因やその経過、結果などを詳細に観察検討して疾病の理論を科学的に確立するために行なわれるものです』いわば、亡くなられた患者さんの最後の表現の場であるので、それを受け止めるだけの体制を整備し、詳細な検討を加えるべきだと考えます。全国的な傾向同様、解剖体数は減少の一途で、年間10症例を確保するのも困難な状態で、初期臨床研修・内科学会認定施設等の維持も厳しくなってきています。
剖検の実施は月曜から金曜の8:30から17:30に執刀できるものを基本としていますが、時間外や土日・休祭日にも可能な限り対応しています。基本的には全例CPC(Clinico-pathologicalconference)を行い、臨床医との協議の末、最終剖検診断を行います。CPCはほぼ毎月1症例、内科と連携して開催されます。他診療科の症例においては、各カンファレンスの際に開催しています。その後に最終剖検診断としてご遺族に報告されます。
なお同カンファレンスは卒後臨床研修制度の必須項目であるCPCレポートの一環として、研修医が臨床歴のプレゼン・質疑応答し、各研修医にレポートを提出させることにしています。また、新専門医認定制度における病理専門医養成ために、宮崎大学医学部附属病院病理専門医研修プログラムの連携施設として参加しており、専門医研修の一環として、解剖症例の提供を行っています。
- 参照:宮崎大学医学部附属病院病理専門医プログラム
https://www.pathology.or.jp/senmoni/706miyazakidaigaku2023.pdf
臨床各科との症例検討会
ほぼ毎日のように年間250回にも及ぶ各診療分野とのカンファレンスを開催・参加し、病理診断の根拠となる肉眼・顕微鏡画像を提示しながら行っています。その他、個別の症例に関するディスカッションは随時行っています。また、できる限り多くの病理情報を電子カルテ上に展開することを心がけており、手術標本は全例において全体像や割面像、組織標本採取部位、必要症例では病変のマッピング図や組織・細胞画像も公開しており、これらを患者・家族への説明にも利用してもらえるようにしています。また、他施設検体においては、バーチャルスライドシステムを用い、デジタル画像として永年的に活用出来るようにしています。
- 剖検所見会(CPC)(内科カンファレンス合同、第3火曜日、16:00〜)
- 細胞診最終診断ディスカッション(毎日 11:30〜)
- 外科症例カンファレンス(毎週火曜日 17:30〜)
- 血液疾患症例カンファレンス(毎週 火曜日17:00〜)
- 婦人科病理カンファレンス(毎週 水曜日17:00〜)
- 呼吸器合同カンファレンス(毎週 木曜日17:30〜)
- 泌尿器病理カンファレンス(隔週 木曜日16:00〜)
- 消化器外科カンファレンス(毎週 金曜日7:30〜)
- 腎生検カンファンレス(適宜)
- 乳腺病理カンファレンス(適宜)
学会活動
・日本病理学会・国際病理アカデミー・日本臨床細胞学会・国際細胞学会・日本臨床細胞学会九州連合会・日本癌学会・日本血液学会・日本リンパ腫学会・日本血液病理研究会・日本血栓止血学会・国際血栓止血学会・日本血管生物医学会・日本血管病理研究会・日本臨床衛生検査技師会・宮崎県臨床検査技師会
認定資格
- 日本病理学会認定施設(7014)
- 日本臨床細胞学会認定施設(0495)
- 日本病理学会認定病理専門医・専門医研修指導医
- 日本臨床細胞学会認定細胞診専門医
- 日本臨床細胞学会認定細胞検査士
- 国際細胞学会認定国際細胞検査士
病理診断科の信念と業務実績
県立宮崎病院は宮崎県下の医療の中心として、高度医療・急性期医療・政策医療の提供することを病院の理念としています。我々、病理診断科もその理念に呼応すべく、すべての診療領域に高水準で迅速かつ的確な病理診断を提供することを目指しています。精度の高い病理診断を行う為には病理学分野のみならず、医学全般にわたる最新の知見・情報を取り入れることは不可欠であり、それを具現化するための技術や機器の充実・更新等を含めた病理診断技術を取り入れるだけでなく、宮崎県のすべての診療施設に還元・発信することも重要だと考えています。
病理診断が担う業務範囲はほぼ全科の診療に関わっているため、すべての診療領域に対応していかなければなりません。しかし、少人数で全ての領域を高いレベルでカバーするのは必ずしも容易ではないため、多くの診療科とカンファレンスを行うのみならず、密なコンタクトをとることで、臨床病態と病理診断との整合性を確認しています。
現在、病理診断科は、病理専門医常勤2名・非常勤2名(週2日)、臨床検査技師7名(臨床検査科所属:常勤6名・非常勤1名、うち細胞検査士6名)及び事務職員2名の総勢13名の信頼できる仲間たち『mycrewdeep』皆でサポートし合い、組織としても個々としても研鑽を積み、診断精度・技術の更なる向上を目指しています。
新築移転後4年半が経ち、手術室増加で急増した病理検体数増加も落ち着いてきたものの、今年度の組織受付検体数・作製ブロック数・作製標本数・迅速細胞診数は過去最高を記録しました(下記診療実績参照)。病院の掲げる月500件の手術件数となると病理検体数は更に増加することとなり、現状の病理医・技師数で処理可能な範囲で収まるかが危惧されます。県立病院組織全体の財政問題や検査技師の所属問題を含め改善が急務であり、この1〜2年の状態を注視していくこととしています。
当科のモットーであるATP「明るく(A)、楽しく(T)、ピシャ〜っと!(P)」をエネルギーに笑顔・笑い声の絶えない明るい職場として業務を遂行しています。
当科の2026年度のテーマは『KAAMMI』(神):精通した(Knowledgeable)知識・技術で、素早く・積極的(Agile・Aggressive)、かつ、慎重(熟慮された)・感動的で(Mature・Marvelous)、非の打ち所がない(Invulnerable)診断を行うようにして参ります。
診療実績
| 年度 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 組織診受付数 | 4,952 | 5,204 | 5,451 | 4,570 | 4,740 | 5,100 | 5,226 | 5,532 | 5,470 |
| 組織診検体数 | 6,657 | 7,192 | 7,802 | 7,053 | 7,270 | 7,603 | 7,754 | 8,248 | 8,418 |
| ブロック数 | 14,471 | 16,818 | 17,952 | 16,210 | 18,052 | 19,256 | 19,428 | 19,379 | 20,215 |
| 組織スライド数 | 38,979 | 43,063 | 47,490 | 45,041 | 40,034 | 44,934 | 48,027 | 52,088 | 51,440 |
| 免疫染色枚数 | 6,052 | 5,936 | 7,145 | 7,030 | 5,053 | 5,935 | 6,698 | 7,505 | 7,635 |
| 術中迅速件数 | 305 | 341 | 326 | 334 | 313 | 322 | 324 | 410 | 379 |
| 細胞診受付数 | 6,263 | 6,582 | 6,208 | 5,740 | 5,739 | 6,021 | 5,966 | 6,116 | 6,093 |
| 細胞診検体数 | 6,746 | 7,064 | 6,691 | 6,618 | 6,205 | 6,543 | 6,566 | 6,764 | 6,781 |
| 細胞診スライド数 | 9,767 | 10,380 | 10,383 | 9,813 | 9,554 | 9,993 | 10,419 | 13,855 | 11,094 |
| 細胞診迅速件数 | 199 | 289 | 252 | 52 | 60 | 61 | 57 | 82 | 94 |
| 病理解剖症例数 | 4 | 13 | 13 | 9 | 4 | 8 | 9 | 5 | 4 |

「医療におけるヤタガラスとならん!」
正確・迅速な病理診断で
患者さんのために適切な診療を導く!
(県立宮崎病院病理診断科シンボルマーク)

