当院産婦人科は日本産婦人科学会専攻医指導施設、地域周産期母子医療センター、日本婦人科腫瘍学会修練施設、日本周産期新生児医学会認定施設、日本女性医学学会研修施設、母体保護法指定医師研修機関としての役割を担っています。そのため最新・最善の医療を提供するのみならず、次代を背負う医師を養成するための施設として日夜研鑽に努めています。2021年度はスタッフ7人、フェロー1人、レジデント2人の計10人で診療に従事しています。
子宮頸癌は2020年47例で、手術可能な症例は根治手術である広汎子宮全摘出術を行っています。また子宮頸癌の初期前がん病変には可能な限り子宮温存手術(子宮頸部円錐切除術やレーザー蒸散術)を行っており、年間100件以上治療しています。この治療の積み重ねが将来の子宮頸癌の発症の減少に寄与すればと願っています。
子宮頸癌が近年若年発症化していることは周知の事実ですが、進行癌が多くなったように感じます。ほとんどの子宮頸癌の原因とされるヒトパピローマウイルス(HPV)に対するワクチンですが、従来の2 価と4価に加えて、今年より本邦でも9価が発売されました。しかし予防効果が非常に高いとされるHPVワクチンの日本における普及はまだまだで、未接種世代には現時点でも子宮頸がん検診(細胞診)が最大の方策です。行政の努力もあり徐々に検診率は上昇していますがまだ十分なレベルではありません。検診の習慣化をお願いする次第です。
子宮体がん(肉腫を含む)は2020年69例でほぼ全例手術を行い、進行例では術後化学療法を追加しています。2018年から当科でも条件を満たす初期癌に対して腹腔鏡による低侵襲手術を開始し、年間10件程度を行っています。
卵巣がんは2020年37例(境界悪性腫瘍を除く)で、可能な限り手術による摘出を目指しており、腸管浸潤で切除困難な場合は消化器外科との連携で腸管合併切除を行っています。また初回治療時に摘出困難なことが予想される場合は術前化学療法を行い、奏効した場合は摘出手術を行い、さらに化学療法を追加しています。近年適応となったPARP阻害薬による維持療法も積極的に導入し、予後改善を目指しています。
稀な悪性腫瘍ではありますが、外陰がんは2020年3例、腟がんは2020年2例で、根治手術および放射線療法で治療しています。
また良性卵巣腫瘍や子宮筋腫等の疾患に対しては、条件を満たせば腹腔鏡による低侵襲手術を積極的に行っています。
2020年の分娩数は492例で、母体搬送は117件となっています。内科、外科や精神科と協同で診療していく妊婦が半数近くを占めています。新生児科および小児外科とも連携し、早産、形態異常などのハイリスク分娩まで幅広く対応しております。救急外来、新生児科、手術室の協力があり、母体搬送は原則断らないを目標にしています。また開業医の先生方と緊密に連携をとっており、ご紹介いただいた患者さんは分娩後の経過が順調であれば原則紹介元への転院をお願いしております。何卒ご了承ください。
宮崎県の多数の患者さんが受診され責任をひしひしと感じています。そのご期待に添えるよう今後も努力をしていく所存です。
受診される方へ
初診の場合は、原則紹介状が必要です。かかりつけ医より紹介状を持参して来院してください。
診療実績
分娩数
- 2020年度 分娩数 492例(うち双胎妊娠12例)
- 2020年度 母体搬送 117例
2020年度 手術件数
広汎性子宮全摘出術 | 13例 |
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子宮体癌手術 | 47例 |
卵巣癌手術(境界悪性腫瘍を含む) | 32例 |
外陰癌手術 | 2例 |
子宮摘出術 | 31例 |
円錐切除術 | 71例 |
レーザー手術 | 42例 |
子宮脱手術 | 2例 |
筋腫核出手術 | 9例 |
良性卵巣腫瘍 | 35例 |
腹腔鏡手術 | 66例 |
※子宮附属器腫瘍摘出術(腹腔鏡) | 31例 |
※腹腔鏡下膣式子宮全摘術 | 15例 |
※異所性妊娠手術(腹腔鏡) | 10例 |
※腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術 | 10例 |
※審査腹腔鏡 | 0例 |
異所性妊娠手術(開腹) | 0例 |
帝王切開術 | 163例 |
子宮内容除去術(子宮内膜全面掻爬を含む) | 111例 |
子宮頸管縫縮術 | 7例 |
その他 | 23例 |
合計 | 654例 |
定例手術 | 551例 |
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急患手術 | 103例 |