小児外科

 小児外科とは16歳未満の小児を対象とする消化器および一般外科です。小児は発育の途上にあり、身体が大きくなっていくだけでなく生理機能も変化していきます。疾患も小児では内臓や体表の先天性形成異常が多く、その多くは成人にはみられません。小児の生理を理解し、疾患とその病態、そしてその治療法に関する専門的知識をもった、小児を安心して預けることのできる外科医が小児外科専門医です。

 取り扱う疾患は多彩で、鼠径ヘルニアのように発生頻度が高く、手術入院が2泊3日で済むものもあれば、新生時期に発症する食道閉鎖、鎖肛、Hirschsprung病など、過大な手術侵襲を避けるため、多段階手術を検討する疾患もあります。(疾患の詳細については、小児外科学会ホームページを参照下さい。一般社団法人日本小児外科学会 (jsps.or.jp))

 自然治癒が期待できる疾患は一定の年齢まで手術を待機することもあります。例えば臍ヘルニア(出べそ)は、乳児期早期から適切に圧迫固定することにより、手術することなくきれいな形状にて閉鎖するため、2歳以降、臍の形状がよくない場合に手術適応となります。軽症なものから重篤な疾患まで、術後の何十年という社会生活を見据えた上で、手術や治療を選択します。

 外科的疾患だけでなく、栄養や下痢、便秘などの消化管の訴えに関してもご相談下さい。なお、成人された術後の患者さんや小児外科疾患が疑われる患者さんにつきましても、当科にて診療させていただいております。

外科

外科の紹介

現在、当科には常勤の医師が16名所属しています。
各医師は、乳腺、呼吸器、上下部消化管、肝胆膵、腎移植の5つのグループに所属し臓器別のチーム医療を行っております。

各専門分野の詳細はそれぞれをクリックしてください。

当科の施設認定は下記の通りです。

  • 日本外科学会専門医修練施設
  • 日本乳癌学会専門医制度認定施設
  • 日本消化器外科学会専門医制度指定修練施設
  • 日本呼吸器外科学会専門研修連携施設
  • 腎移植施設(公益社団法人日本臓器移植ネットワーク 一般社団法人日本腎臓学会)
  • 日本オンコプラスティックサージェリー学会乳房再建用エキスパンダー実施施設
  • 日本消化器病学会認定施設
  • 日本胆道学会認定指導施設
  • 日本膵臓学会認定指導施設
  • 日本腹部救急医学会認定施設

(文責:大友)

乳腺グループ(大友副院長)

当グループは、乳腺専門医2名体制で、質の高いエビデンスを元に、ガイドラインに沿った治療をベースにしながら、患者さんに寄り添って、最善・最良の乳癌医療の提供を目指しております。また、総合病院という特色を生かし、高齢者や併存疾患を抱えた患者さんの受け入れも行っております。定期的にカンファレンスを開催し、多職種とのチーム医療を実践し、患者さん一人ひとりに向き合いながら診療に取組んでおります。
2018年度の年間乳癌手術症例数は258例と九州でも有数の施設として誇っております。約50%の方に乳房温存手術を実施し、高精度の3TMRIを用いて切除範囲の決定を行い、安全で正しい手術方法を提供しております。2014年2月より乳房再建用エキスパンダー実施施設として施設認定を受け、乳房再建に公的保険を使う事ができるようになりました。また、適応があれば内視鏡を用いた小さな創で行う乳房再建手術も実施しております。センチネルリンパ節生検においては、2020年1月からICG蛍光法と最新の専用機器を導入し、より確実なセンチネルリンパ節の同定と腋窩郭清の省略が可能となりました。周術期の化学療法は、当院の腫瘍内科医と連携し、質の高い治療を提供しております。
当院では“宮崎県がん地域連携パス”を積極的に活用し、術後のフォローアップを患者さんのかかりつけの医療機関とともに取組んでおります。
新患日は月・火・金曜日です。乳癌の専門家として最新の再発・進行乳癌治療、セカンドオピニオン外来、遺伝子検査や情報の提供、国内の臨床試験への参加等も積極的に行っております。

呼吸器グループ(別府部長)

呼吸器外科領域では、原発性肺癌や転移性肺癌などの肺悪性腫瘍をはじめ、肺良性腫瘍、縦隔腫瘍、気管腫瘍、胸膜・胸壁腫瘍、気胸、巨大肺嚢胞、膿胸、炎症性肺疾患、先天性肺異常など幅広い疾患に対して、呼吸器外科専門医を中心に診療を行っています。年間100例前後の原発性肺癌症例を含む総数150例前後の手術を施行し、90%以上は胸腔鏡下に行っています。例えば、肺癌に対する肺葉切除では通常3~4cmほどの小開胸創と1~2cmの操作孔2か所で行い、肋骨切離は行わず、開胸器も使用しません。また、縦隔腫瘍や気胸においても0.5~2cmの操作孔3か所で手術を行っています。ただ、手術の安全性と確実性を重視する観点から、胸腔鏡手術の適応については一例ごと慎重に術前評価しております。一方、周囲組織へ浸潤する腫瘍に対しても、浸潤臓器を合併切除することによって積極的に治癒切除を行っています。当院では呼吸器外科、呼吸器内科、放射線科、病理検査科の各専門医が参加する合同カンファレンスを週1回定期的に行っており、症例ごとに手術適応の評価、病理検査結果の考察、抗癌剤治療や放射線治療による術後補助療法の適応などについて詳細に検討しています。当科ではこのような各診療科の密な連携によって、より質の高い診療を目指しています。

上部消化管グループ(日高部長)

当院の上部消化管の外科治療としては、食道癌、胃癌、GISTなどの悪性腫瘍に対する手術症例が多く、他に食道裂孔ヘルニアや胃食道逆流症などの良性疾患、特発性食道破裂や胃・十二指腸潰瘍穿孔に対する緊急手術など、多様な疾患を手がけております。食道癌に対する食道亜全摘術は侵襲が大きく、難度の高い手術でありますが、当院では胸腔鏡下手術を導入し、低侵襲な方法で安全に手術を行っています。胃癌に対しても、主に早期癌に対しては腹腔鏡下胃切除術や腹腔鏡下胃全摘術を行っており、進行癌の場合には術前または術後の化学療法を併用して治療成績の向上に努めています。切除不能と診断された場合には、他の治療法(化学療法や放射線療法など)について提示し、QOLを向上させるためにあらゆる手段を駆使します。また、胃穿孔や十二指腸穿孔により腹膜炎を来した場合などの緊急手術にも24時間対応可能です。当院は宮崎県の基幹病院であり、さらにがん治療の拠点病院であるため、県内の様々な医療機関から多数の患者紹介を頂いております。近年は高齢化のため複数の合併疾患を有するリスクの高い患者さんが増加してきましたが、質の高い手術ときめ細かい周術期管理を徹底し、多くの患者さんに満足のいく医療を提供していると自負しております。セカンドオピニオンにも対応致しておりますので、対象の患者さんやそのご親族の方は当院へ御相談ください。

下部消化管グループ(中村部長)

下部消化管領域では、結腸癌50~60例、直腸癌20~30例と大腸癌手術を年間70~90例程度行い、手術件数は年々増加しています。そのほか、大腸穿孔腹膜炎や腸閉塞などの緊急手術例などをあわせると年間100例を超える手術を行っています。手術は侵襲の少ない腹腔鏡手術を積極的に導入していますが、癌が非常に進行した方や緊急手術など通常の開腹手術が必要な方も多いため、腹腔鏡手術の割合は約半分です。進行した直腸癌では骨盤内臓全摘術や側方郭清などの拡大手術のほかに、術前化学放射線治療を導入し症例に応じて適切に治療を行っています。また従来であれば人工肛門造設術が必要な腸閉塞を伴う進行大腸癌に対しては、大腸ステントを留置することで人工肛門を回避し全身状態を整えて、精密検査を行ってから根治手術を行っています。近年、高齢化に伴い血液透析や重篤な合併症などのために濃厚な全身管理が必要な方々が増えており、日々一丸となって手術や週術期管理に臨んでいます。

肝胆膵グループ(大内田部長)

当グループでは肝臓、胆道(胆嚢・胆管・乳頭部)、膵臓、脾臓の良悪性疾患に対する検査、治療を専門的に行っています。 肝悪性腫瘍に対しては肝切除術を中心に、マイクロターゼ凝固療法やラジオ波焼灼術なども駆使して根治を目指しています。再発例に対しても可能な限り切除を目指し、切除困難例には肝動脈塞栓療法、肝動脈内抗癌剤注入療法などを状況に応じて行っています。 胆道癌、膵臓癌は外科的切除が唯一根治を望める治療法であるため、積極的に切除を行い、広範囲に進展した場合でも拡大手術や血管合併切除などを駆使して根治を目指しています。ただし、侵襲の大きな手術となるため、手術適応に関しては厳密に検討し、超音波内視鏡(EUS)、超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)による進展度・深達度診断、生検や細胞診による確定診断を行い、過不足の無い治療を行っています。近年術前・術後補助療法により治療成績が向上しており、当院でも化学療法を中心とした補助療法を導入し、胆道癌、膵臓癌の予後改善を目指しています。また、膵仮性嚢胞に対する超音波内視鏡下経消化管的嚢胞ドレナージ術(EUS-CD)や急性胆管炎・胆嚢炎に対する内視鏡的あるいは経皮経肝胆道ドレナージ術(ENBD、EBD、PTBD、PTGBD など)による緊急対応も常時行 っています。  肝胆膵疾患が疑われる症例、診断・治療に難渋する症例などいつでもご紹介ください。また、緊急処置が必要な症例に対しては直接ご連絡をいただければ迅速に対応させていただきますのでいつでもご相談ください。 

腎移植・ヘルニアグループ(三浦医長)

腎不全で血液透析や腹膜透析が必要になると、透析による合併症のため本来の寿命を全うすることが難しくなりますが、腎移植を受けることで、本来の寿命に近く長らえることができ、透析による時間的拘束、食事制限、水分制限などからも解放されます。
当院では 1988 年に第一例目の生体腎移植を施行し、2022年3月までに生体腎移植112例、献腎移植19例(計131例)を行ってまいりました。移植医は国内有数の膵臓移植、腎臓移植手術数を誇る九州大学臨床腫瘍外科から派遣されており、九州大学と密に連携して診療を行っております。生体腎移植では、血液型適合移植だけではなく、血液型不適合移植や透析を経ずに移植を行う先行的腎移植も行っており、毎月2例の手術が可能な体制が整 っています。また、当院は宮崎県内唯一の献腎移植の施設で、60名以上の方が献腎登録をされています。献腎移植の増加のために啓蒙活動やドナーディテクションにも力を入れています。外来では県外で膵臓や肝臓の移植を受けた方の定期診察も行なっています。
レシピエント(腎移植を受ける方)は、通常手術の1週間前(血液型不適合の場合は2週間前)から入院し、術後約2週間で退院となります。術後 1 – 3 ヶ月で社会復帰が可能です。移植後は免疫抑制剤の内服継続と定期的な外来通院が必須です。
ドナー(腎臓を提供する方)の手術は傷が小さく術後の回復が早い後腹膜鏡で行っています。術後 3 – 5 日で退院となり、約2週間程度で社会復帰が可能です。
当グループは鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニアの治療にも力を入れています。鼠径ヘルニアは TEP(腹腔鏡下腹膜外鼠径ヘルニア修復術)を標準術式として採用しており、低侵襲で根治性の高い手術に努めています。

腎臓・膵臓移植、各種ヘルニアについていつでもご相談ください。
県立宮崎病院 外科外来 0985-24-4181(内線 5345)

新生児科

  • 地域周産地域医療センターとして、24時間体制で未熟児・新生児医療を行っています。
  • 新生児センターは5階病棟にあり、病床数は12床(NICU3床、GCU9床)です。
  • 新生児特定集中治療管理が可能な設備を有しています。
  • 新生児センター退院後に通院の必要な方のために、毎週月曜日、金曜日の午後に発達外来を設けています。
  • 未熟児・新生児の救急医療を要する場合は、搬送前に新生児センターへ電話して下さい。
    (電話:0985-24-4181)
  • 主な疾患
    • 早産児、低出生体重児、極低出生体重児、超低出生体重児
    • 多胎児
    • 呼吸障害(呼吸窮迫症候群、胎便吸引症候群、新生児一過性多呼吸など)
    • 新生児仮死
    • 先天性心疾患、不整脈
    • 小児外科疾患
    • 感染症(肺炎、敗血症、髄膜炎など)
    • 先天奇形(ダウン症候群、染色体異常など)
    • 中枢神経疾患(新生児けいれん、脳内出血など)
    • 消化器疾患(新生児メレナ、初期嘔吐など)
    • 黄疸
    • その他(低血糖、代謝性疾患、内分泌疾患、血液疾患など)
  • ハイリスク妊婦や家族に対して出生前訪問を行っております。
  • 日齢3診察や1か月健診を新生児科医が担当しております。
  • 心臓カテーテル治療の必要な患者さんについては、National Clinical Database(NCD)へ匿名での症例登録を行っています。

小児科

小児科の特徴

当院では、こどもたちやご家族の立場に立って診療を行うことをモットーにしています。

  1. 日常的な疾患から、専門的分野に属する疾患に至るまで幅広く対応しています。
  2. 24時間365日体制で二次・三次小児救急医療を行っています。
  3. 入院が長期化するこどもたちのために、院内学級を設けています。
  4. 入院中のこどもたちが少しでも過ごしやすいように、病棟には保育士が常駐しています。

診療内容

  1. 外来は月曜日から金曜日までの毎日行っています。午前中は一般外来と専門外来、午後は急患と専門外来です。原則、紹介状が必要です。
  2. 小児病棟は、外科系も合わせて32床です。
  3. 対象疾患は、脱水症、気管支炎、胃腸炎、気管支喘息などの日常病のほかに心臓病(川崎病を含む)、腎臓病、血液疾患、神経疾患、てんかん、発育・発達の専門外来を行っています(外来当番表参照)。
  4. 予防接種については、当科でフォローしている患者さんで他の医療機関での接種に不安がある場合に、個別で対応しています。
  5. 休日・時間外は、当科でフォローしている慢性疾患などの急変時および救急搬送や他の医療機関からの紹介を受け入れています。
  6. 新生児・未熟児の入院につきましては、2015年4月から新設された新生児科へご相談下さい。
  7. 新型コロナウイルス感染症流行時期は、感染小児患者の入院対応や宿泊施設への往診を行っていますが、自宅療養中の患者さんの診察や電話相談は行っておりません。

カンファレンスなど

病棟回診毎週月曜日 14:30~(コロナウイルス流行時期は中止)
症例カンファレンス毎週水曜日 17:30~
抄読会毎週金曜日 8:00~
宮崎市郡小児科医会例会・症例検討会毎月第4木曜日 19:00~(コロナウイルス流行時期は中止)